comedieが鹿肉を使う理由

comedieでは毎週のランチでほとんどの場合、鹿肉を使った料理を出しています。
今回はなぜ鹿肉ばかりを使うのか、ということについてまとめておきます。

鹿肉を使い始めたきっかけ

但馬地域には野生の鹿が多く、年々増え続けています。
夜に車ですこし走ればすぐに見つけられる鹿。鹿にぶつかって廃車になった話もよく聞きます。
この鹿をもっと食べればいいのでは。

移住してきてから鹿肉を食べる機会が何度かあり、純粋においしいと感じ食肉としての鹿に興味を持ちました。

その後、お店でどんな料理を提供しようかと考えていた中で、なるべく地元の食材・環境負荷の少ない食材を使いたい(エシカルの概念を表現したい)というcomedieの考え方を深めていくと、地域特有の害獣である鹿のジビエ活用はぴったりだと感じました。
これが鹿肉を使ってみようと思ったひとつのきっかけです。

この地に移住したことで害獣としての鹿も食肉としての鹿も自分にとって珍しいものではなくなり、身近なものを食に取り入れたいと考えていたタイミングでもありました。

また、鹿の精肉業をしている友人に気軽に相談できた点も、鹿肉を使うきっかけになりました。

最初からお店で鹿肉を使おうと決めていたわけではなく、鹿や友人との縁で自然と流れができたという感覚です。

鹿肉を使い続ける理由

害獣である鹿の肉を利用するということで、僕の好きなエシカル(倫理的)消費という観点で「使い続ける理由」がいくつかあります。
エシカル(倫理的)消費については長くなるのでここでは詳しくは述べません。調べてみてください。

環境保護とサステナビリティ(持続可能性)

鹿は農作物や森林に大きな被害を与える害獣であるため、その数を適切に管理することは環境保護や森林再生の促進に繋がります。
増えすぎた鹿を捕獲しその肉を消費することで、地域の生態系のバランスを保ち、農作物への被害を減らすことができます​​。

信頼性とトレーサビリティ(追跡可能性)

お店で使用する鹿肉は「但馬のジビエ ココ鹿」さんから仕入れています。
取引先でもあり友人でもある彼の人柄をよく知っているし、作業場の見学をさせてもらったこともあります。

野山を駆けた鹿を捕獲し地元で処理された肉は、無理に成長を促したり抗生剤や飼料をたくさん使う畜産と違い、より自然に寄り添ったプロセスでつくられていると思います。
個人的感情ももちろんあるのですが、品質の面でもトレーサビリティの面でも、鹿肉は他の大量生産の食肉よりも安心できると考えています。

また地元で捕獲~精肉~消費を行うことで、多少ですが遠くから輸送される肉よりも環境への負荷が少なくなります。

食品ロスの削減

家畜として育てられた動物ではなく害獣として捕獲された鹿を食用として利用することで、無駄なく資源を活用することができます。
通常は駆除された後に廃棄されることが多い害獣の肉を食品として消費することで、食品ロスの削減にもすこしは貢献できるのではないかと考えています。

地域経済の活性

鹿肉を利用することで地元の狩猟者や精肉業者を支援することができます。
需要が増えれば供給も増え、地域特有の産業の活性化にも繋がり、新たな雇用創出の可能性もあります。

地元の食材を積極的に使用することは地域経済の活性化に不可欠であり、特に豊岡や但馬といった小規模経済圏ではこのような地産地消の取り組みがとても重要だと思っています。

鹿肉が地域の特産品だという認識が強まれば、シビックプライドの醸成にもほんのすこしは役立つのではと考えています。

鹿肉の特徴と使い方

ここからは鹿肉の特徴と使い方についてです。

鹿肉の特徴

鹿肉は高たんぱく・低脂肪で鉄分が豊富なヘルシーな食材です。
他の肉類と比べてカロリーが低く、重たさを感じにくいため、健康志向の人にもおすすめの食材です。

部位にもよりますが適度な噛みごたえとジビエならではの深い味わいがあり、ヘルシーでありながらも食事としての満足感は十分です​。

牛肉の赤身と似たイメージを持っていて、僕は鹿肉を使った料理を考えるときには牛肉の料理や調理法を参考にすることが多いです。

comedieでの鹿肉の使い方

普段のランチでは高級な部位を使用することは難しいため、いくつかの部位をミックスしたパックやミンチ(ひき肉)を主に使っています。

ランチは基本的には作り置きおかずのスタイルなので、作り置きできて複数の部位を使いやすい料理として、煮込み系の料理をつくることが多いです。

トマト煮やハーブ煮、ワイン煮などイメージしやすいものから、スパイスを使ったものや醤油を使ったものなど幅広いテイストに応用でき、味がブレにくいのが煮込み料理の良いところです。

脂が少ない鹿肉のパサつきを抑え、旨味を引き出すのにも適した調理法だと思っています。

また主にイベントでの出店や冷凍販売をしている鹿肉のキーマカレーは、今ではcomedieの看板商品の一つにもなっています。
ひき肉をしっかりと焼いてから煮込むことで、ワイルドな風合いと旨味がしっかりとあるカレーになっています。

店舗やオンラインショップ、たじまんまで購入できるので、豊岡周辺の方は冷凍庫のストックにぜひ。

地域柄、鹿に対するネガティブなイメージは根強くあるのですが、comedieの鹿肉料理を食べたお客さんからは「全然臭くなかった」、「旨味があっておいしかった」、「鹿肉ってこんなにおいしいとは知らなかった」といった好意的な反応をもらうことが多く、純粋に嬉しく思うのと同時に大きなやりがいも感じています。

”1番おいしい”かどうかは気にしない

たくさんの人から好意的な反応をもらうことは多いのですが、鹿肉の料理をつくっていて「まあおいしいけれど、これってわざわざ鹿じゃなくて他の肉のほうがおいしいんじゃないか」と自分でも思うことがよくあります。

特にうちの場合は柔らかい部位だけを使っているわけではないので、人によっては食べにくいと感じることもあると思います。

とにかく、最高の一品ではない可能性が高いです。
それでも、ここまでに述べてきた理由から、「1番おいしい」よりも「鹿肉である」ことが大切だと考えています。

もちろん、できる限りおいしいものを作ろうと努力しているし、いつもおいしいとは思って出しているし、基本的に自分が食べたいものや好きなものしか提供していません。

一般的に飲食店を利用する理由として大きいのはおいしさや食欲を満たすことだと思いますが、comedieではそれ以外に店主や料理・食材のストーリーであったり、食事や料理のおもしろさ(料理がしたいと感じられるかどうか)、そしてエシカル消費といった面を重視しています。

そのような理由から、「必ずしも1番おいしいわけではないもあり」だと思っています。

害獣である鹿肉、捨てられてしまいがちなかぶや大根やにんじんの葉、夏の終わりには飽きてしまう”特産”のピーマンをどう使うのか。
可能性に出会える場所でありたいと思っています。

鹿肉にまつわるストーリーを読んで、さっそく鹿肉料理が食べたくなりましたか?

家庭で鹿肉を使う場合

鹿肉料理をつくる際には、鮮度や質の良い肉を選ぶことが何よりも大切だと思います。

適切な処理が行われていなかったり、罠にかかってから精肉するまでに時間がかかった鹿肉は、独特の獣臭が強く出てしまうようです。
また趣味で狩猟をしている人から分けてもらった肉だと、冷凍庫で何か月も放置されていたものだという場合もあります。冷凍焼けで風味や味が落ちていたり、冷凍庫の匂いが移ってしまっていることがあるので注意が必要です。

おそらく「鹿肉が苦手」という人たちは、昔ながらの(?)田舎ならではの(?)このような過程を経た鹿肉を食べた経験があるのだと思います。

きちんと買うのであれば、うちとしてはやはり「ココ鹿」さんの鹿肉がおすすめです。
豊岡周辺の方はたじまんまで、遠方の方はオンラインでも購入できます。

料理をするときには、簡単なのはやはり煮込み系の料理。ステーキのように繊細な火入れを気にする必要がなく、長く煮ればそれなりに柔らかく食べやすくなります。
トマト煮やハーブ煮、カレー、ポトフなどいろいろできます。

また家庭で作ってすぐに食べられる環境なら、鹿カツや唐揚げなどもおすすめです。

それからひき肉なら餃子やハンバーグ、肉団子など他の肉と同じように使えます。

旨味はしっかり感じつつも、脂肪分が少ないのでヘルシーでさっぱりとした肉料理に仕上げることができます。

さいごに

ここまでの内容を読むと、牛・豚・鶏など他の肉を食べるのは良くないことのように思えるかもしれませんが、現代日本の日常生活において、それらを一切排除するというのは難しいと思っています。

comedieでも我が家でも肉は鹿しか食べないなんてことは全くありません。

ただ飲食業をしている以上多くの人の目に触れるチャンスでもあると思っているので、考え方や選択肢のひとつの提案として鹿肉を使っているというのが本音です。

ランチやイベントで鹿肉を食べて、鹿肉の味や使い道を知ったり、鹿肉を消費する意味やエシカルという概念について考えるきっかけにしてもらえれば良いなと思っています。

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